婆あさんは柴折戸を開けた

「まあ、とにかく御覧なすって下さい」と云って、婆あさんは柴折戸を開けた。純一は国のお祖母《ば》あ様の腰が曲って耳の遠いのを思い出して、こんな巌乗《がんじょう》な年寄もあるものかと思いながら、一しょに這入って見た。婆あさんは建ててから十年になると云うが、住み荒したと云うような処は少しもない。この家に手...

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今から新聞社に行く

「僕は今から新聞社に行くから、又遊びに来給え。夜は行《い》けないよ」 机の上の書類を取って懐《ふところ》に入れる。長押《なげし》から中折れの帽を取って被る。転瞬倏忽《てんしゅんしゅくこつ》の間に梯子段を降りるのである。純一は呆《あき》れて帽を攫《つか》んで後《あと》に続いた。

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君のような壮《さか》んな青年

「なんだ。君のような壮《さか》んな青年が六時半に朝飯を食って、午《ひる》が来たのに食べたくないということがあるものか。嘘《うそ》だろう」 語気が頗る鋭い。純一は一寸不意に出られてまごついたが、主人の顔を仰いでいる目は逸《そら》さなかった。純一の心の中《うち》では、こういう人の前で世間並の空辞儀《か...

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