二人の顔を見競《みくら》べて

 垣の外を、毛皮の衿《えり》の附いた外套《がいとう》を着た客を載せた車が一つ、田端の方へ走って行った。 とうとう婆あさんが膳を下げに来るまで、純一は何の詞をも見出《みいだ》すことを得なかった。婆あさんは膳と土瓶とを両手に持って、二人の顔を見競《みくら》べて、「まあ、大相《たいそう》お静《しずか》で...

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天長節日和の冬の日

 その微笑が又純一には気になった。それはどうも自分を見下《みくだ》している微笑のように思われて、その見下されるのが自分の当然受くべき罰のように思われたからである。 純一はどうにかして名誉を恢復《かいふく》しなくてはならないような感じがした。そして余程勇気を振り起して云った。「どうです。少しお掛な...

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少女の頭

「ええええ。あちらから廻っていらっしゃいまし」 少女の頭は萩の茂みの蔭に隠れた。婆あさんは純一に、少女が中沢という銀行頭取の娘で、近所の別荘にいるということ、娵の安がもと別荘で小間使をしていて娘と仲好《なかよし》だということを話した。 その隙《ひま》に植木屋の勝手の方へ廻ったお雪さんは、飛石伝い...

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