純一は巻を掩《おお》うて考えた

 純一は巻を掩《おお》うて考えた。芸術はこうしたものであろう。自分の画《え》がくべきアルプの山は現社会である。国にいたとき夢みていた大都会の渦巻は今自分を漂わせているのである。いや、漂わせているのなら好《い》い。漂わせていなくてはならないのに、自分は岸の蔦蘿《つたかずら》にかじり附いているのではある...

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二人の顔を見競《みくら》べて

 垣の外を、毛皮の衿《えり》の附いた外套《がいとう》を着た客を載せた車が一つ、田端の方へ走って行った。 とうとう婆あさんが膳を下げに来るまで、純一は何の詞をも見出《みいだ》すことを得なかった。婆あさんは膳と土瓶とを両手に持って、二人の顔を見競《みくら》べて、「まあ、大相《たいそう》お静《しずか》で...

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天長節日和の冬の日

 その微笑が又純一には気になった。それはどうも自分を見下《みくだ》している微笑のように思われて、その見下されるのが自分の当然受くべき罰のように思われたからである。 純一はどうにかして名誉を恢復《かいふく》しなくてはならないような感じがした。そして余程勇気を振り起して云った。「どうです。少しお掛な...

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