故郷の町はずれ

 こんな事を思っている内に、故郷の町はずれの、田圃《たんぼ》の中に、じめじめした処へ土を盛って、不恰好《ぶかっこう》に造ったペンキ塗の会堂が目に浮ぶ。聖公会と書いた、古びた木札の掛けてある、赤く塗った門を這入ると、瓦《かわら》で築き上げた花壇が二つある。その一つには百合《ゆり》が植えてある。今一つの...

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純一は巻を掩《おお》うて考えた

 純一は巻を掩《おお》うて考えた。芸術はこうしたものであろう。自分の画《え》がくべきアルプの山は現社会である。国にいたとき夢みていた大都会の渦巻は今自分を漂わせているのである。いや、漂わせているのなら好《い》い。漂わせていなくてはならないのに、自分は岸の蔦蘿《つたかずら》にかじり附いているのではある...

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二人の顔を見競《みくら》べて

 垣の外を、毛皮の衿《えり》の附いた外套《がいとう》を着た客を載せた車が一つ、田端の方へ走って行った。 とうとう婆あさんが膳を下げに来るまで、純一は何の詞をも見出《みいだ》すことを得なかった。婆あさんは膳と土瓶とを両手に持って、二人の顔を見競《みくら》べて、「まあ、大相《たいそう》お静《しずか》で...

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